生活習慣病
生活習慣病
生活習慣病とは、食事内容の偏り、運動不足、喫煙、過度の飲酒、ストレスなど、日々の生活習慣が深く関係して起こる病気の総称です。代表的なものに高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症などがあります。これらは合併症がない場合は自覚症状が少ないまま進行することが多く、放置すると心筋梗塞や脳卒中など重大な病気につながることがあります。
早期から生活習慣の見直しと定期的な健診、必要に応じた治療を行うことが大切です。ここでは高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症に関して説明します。
血圧とは血管の壁にかかる圧力のことです。上の血圧は収縮期血圧といい、心臓が収縮して血液が全身に循環した時に計測した数値となります。下の血圧は拡張期血圧といい、心臓が拡張した時の数値となり、末梢血管抵抗と言われる細い血管への血液の流れにくさや循環する血液量の増加などで上昇します。
血圧が持続的に高い状態を「高血圧」といいます。一般的な診断基準として、診察室での血圧が 140/90 mmHg 以上 を高血圧と判断します。高血圧管理・治療ガイドライン2025では管理数値が変更され、診察室血圧130/80mmHgが目標値となっています。
高血圧は主に以下のように分類されます。
| 分類 | 説明 |
|---|---|
| 正常血圧 | 通常は上の数値が120未満、下の数値が80未満。健康的な目標値です。 |
| 高値血圧 | 上の数値が120〜139、下の数値が80〜89の範囲。注意が必要です。 |
| Ⅰ度高血圧 | 上の数値が140-159または下の数値が90-99の場合のⅠ度高血圧と診断されます。 |
| Ⅱ度高血圧 | 上の数値が160-179または下の数値が100-109の場合のⅡ度高血圧と診断されます。 |
| Ⅲ度高血圧 | 上の数値が180以上、下の数値が110以上。 かなり血圧が高い状態となり、内服治療を検討していくことになります。また頭痛や嘔気などの症状をみとめることがあります。 |
上記は診察室血圧での評価となりますが、自宅計測する家庭血圧と数値が乖離することがあります。クリニックなどの緊張する空間では過剰に血圧があがることがあるため、家庭血圧が問題なければ無理に血圧を下げるようなことはしない方針です。
高血圧は多くの場合、初期には自覚症状がほとんどありません。急激に血圧が高くなると頭痛、めまい、動悸などが出現する場合がありますが慢性的に高い場合には血圧が一定以上高くても症状が出現しないこともあります。
高血圧を放置してしまうと、血管や臓器に負担が積み重なり、次のような重大な病気のリスクが高まります。
血圧が高い状態が長く続くほど、これらの合併症のリスクは高くなります。自覚症状がなくても定期的な測定と早めの対応が大切です。
高血圧の原因としては5-10%程度に特定の原因のある2次性高血圧があります。
これらの原因があるため問診で経過の確認、採血・超音波などの検査をする場合があります。
これらのように原因が特定できる場合は原因に対し治療を行います。
90~95%は原因が明らかではない本態性高血圧とされており、塩分過剰摂取などの生活習慣や体質が原因で起こります。
治療は生活習慣の改善と必要に応じた薬物療法を組み合わせて行います。
まずは日常生活でできることから始めましょう。
これらの改善だけでも血圧を安定させる効果があります。
生活改善だけでは十分に血圧が下がらない場合や、一定以上血圧が高い場合、高血圧による症状が出ていると考えられる場合は血圧を下げる薬(降圧薬)を処方します。薬は多数の種類があり、患者様の体質や他の病気、年齢に応じて最適なものを選びます。
脂質異常症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)の値が基準から外れた状態を指します。主に以下の3つの異常によって診断されます。
脂質異常症は自覚症状がほとんどなく、知らないうちに動脈硬化が進行します。しかし、早期に見つけて適切に管理することで、将来の心筋梗塞や脳卒中を防ぐことができます。
脂質異常症は、血液検査で以下の項目を評価して診断します。
LDLコレステロール(LDL-C)
140mg/dL以上:高LDLコレステロール血症
血管の壁にたまりやすく、動脈硬化の主な原因となる脂質です。
HDLコレステロール(HDL-C)
40mg/dL未満:低HDLコレステロール血症
血管にたまったコレステロールを回収する働きがあり、少ないと動脈硬化が進みやすくなります。
中性脂肪(TG)
150mg/dL以上(空腹時):高トリグリセリド血症
エネルギー源として重要ですが、過剰になると動脈硬化や膵炎の原因になります。
これらは単独で異常を示すこともあれば、複数が同時に異常となることもあります。
脂質異常症そのものによる症状はほとんどありません。そのため、健康診断で初めて指摘されることが多い病気です。放置すると動脈硬化が進行し、心血管の病気のリスクがでてきます。
動脈硬化が進行した結果、心筋梗塞、脳卒中などの重篤な合併症が出現する可能性があります。また中性脂肪が高い場合は急性膵炎として強い腹痛が出現することがあります。
コレステロールの上昇は生活習慣だけではなく、体質も大きな要素となります。その中で遺伝的にLDLコレステロールが高くなりやすい病気として家族性高コレステロール血症となります。LDLコレステロールが180mg/dl以上と非常に高い場合や、若年で心筋梗塞などの病気になったご家族がいるなどの場合には強く疑われます。この場合は患者様本人も若年時からLDLコレステロールが非常に高くなりやすく、生活習慣の改善に加えて薬物療法を行うことが多いです。
脂質異常症の治療は、
を組み合わせて行います。
脂質異常症では、生活習慣の改善が非常に重要です。
食事療法や運動を行っても十分な改善が得られない場合や、心血管リスクが高い場合には、薬物療法を検討します。
患者様の年齢や合併症を考慮し、治療方針を決めていきます。
糖尿病とは、血糖が慢性的に高くなる病気です。血糖はインスリンというホルモンの働きによって一定の範囲に保たれていますが、インスリンの分泌が不足したり、効きが悪くなったりすることで血糖が高い状態が続くのが糖尿病です。
糖尿病は血液検査を中心に診断されます。
以下のいずれかを満たし、繰り返し確認されると糖尿病と診断されます。
症状があり、血糖値が明らかに高い場合は、1回の検査で診断されることもあります。
糖尿病の初期には、ほとんど自覚症状がないことが多いのが特徴です。
血糖が高くなると、次のような症状が現れることがあります。
症状が出る頃には、すでに病気が進行していることも少なくありません。
糖尿病で最も重要なのは、合併症を防ぐことです。
血糖が高い状態が続くと、全身の血管や神経が障害されます。
糖尿病網膜症
慢性的な高血糖により網膜血管の閉塞、血管新生などで視力低下、失明を起こすことがあります。このため糖尿病診断時には眼科受診を指導することがあります。
糖尿病腎症
腎臓の血管周囲に影響を起こし、構造の変化や機能障害を起こします。採血での腎機能の確認や尿蛋白の排出量によって評価します。
糖尿病神経障害
全身の末梢神経障害が出現し、高頻度でみられるのが多発神経障害となります。四肢のしびれ、感覚低下、異常感覚、痛みなどの症状が出現します。また自律神経の異常により起立性低血圧、消化管運動障害による便秘・下痢、勃起障害などの障害が出現することがあります。
など大きな血管の障害で、重篤な合併症を起こす可能性があります。
糖尿病治療の基本は、生活習慣の改善と運動療法により適正に体重をコントロールし、インスリンの働きを良くすることです。これらでも効果不十分な場合は薬物療法による治療を行います。
無理な制限ではなく、継続できる食事が大切です。目標体重と普段の仕事や生活の状態に応じて目安となるカロリーが変化します。
運動によりエネルギー摂取量と消費量のバランスが改善し、減量効果が期待できます。また運動により糖分が使用されるため血糖を下げる作用があります。
生活改善で十分な効果が得られない場合、薬剤を使用します。体重や併存している合併症に合わせて治療の選択をしていきますが、持続できることが重要なためライフスタイルに合わせて治療を行います。
糖尿病の治療目標は血糖を適切にコントロールし、血管合併症の発症・進展を防止し日常生活のQOLを維持して健康寿命の確保を目標とします。
一般的な目標値は以下の通りです。
年齢、罹病期間、家族などのサポート体制、合併症の状態、低血糖のリスクなどを考慮して治療目標の設定をしていきます。認知症でコンプライアンス不良の可能性がある場合や薬剤の種類で低血糖の可能性がある場合には特にリスクとなるため、目標値の変更をすることがあります。
高尿酸血症とは血液中の尿酸値が高い状態が続く病気です。
尿酸は体内の細胞や食品に含まれるプリン体が分解されてできる老廃物で、通常は腎臓から尿として排泄されます。しかし尿酸が作られすぎたり、排泄がうまくいかなかったりすると、血液中に尿酸がたまり高尿酸血症となります。
高尿酸血症は血液検査で診断します。基準値は以下の通りとなっております。
自覚症状がないことが多いため健診で指摘されることが多いです。
高尿酸血症そのものでは、ほとんど症状はありません。
症状として出現するのは痛風による関節炎、尿管結石を発症した場合になります。
痛風
尿酸が結晶化し、関節に沈着することで激しい炎症と痛みを起こします。また、尿酸の結晶が腎臓に沈着すると(痛風腎)、腎機能を低下させてしまいます。
尿路結石
血中の尿酸が増えることで尿中の尿酸濃度が高まり、また尿自体が酸性に傾くことで尿酸が溶けにくくなり、結石ができやすくなります。
生活習慣病・腎障害
高尿酸血症はメタボリックシンドロームや慢性腎臓病(CKD)を合併しやすいことがわかっています。その結果、動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中などを起こすリスクが高まるため、早期の予防・治療が必要です。
高尿酸血症の治療は生活習慣・食事療法をベースに治療を検討します。生活習慣の改善、食事療法で治療が困難な場合や、数値が高い場合には薬物療法での治療を考えます。
尿酸が上がりやすい食事内容を知り、調整することが治療の基本です。1日400mgを目安にプリン体の摂取制限を行います。
主に肉類、魚類にはプリン体が非常に含まれているため注意が必要です。またビールはプリン体が多いことは有名ですが、アルコール自体もプリン体の産生や尿中への排出低下が起きるため高尿酸血症の原因となります。
清涼飲料水に含まれる果糖でもプリン体の産生や尿中への排出低下が起きるため、高尿酸血症の原因として注意が必要です。
肥満の状態の場合は、内臓脂肪からの脂肪酸増加やインスリン抵抗性などの代謝異常で尿酸が上昇します。このため減量が大切になりますが、激しい運動は無酸素運動となり尿酸が上がるため有酸素運動の方が尿酸に影響せずに肥満の解消につながります。
生活習慣の改善だけで尿酸値が下がらない場合や、合併症がある場合には、薬物療法を行います。
尿酸産生抑制薬
尿酸が体内で作られるのを抑えるお薬です。
尿酸排泄促進薬
尿から尿酸を排出しやすくするお薬です。
患者様の高尿酸血症のタイプ(産生過剰型・排泄低下型)や腎機能を考慮して適切な薬剤を選択します。どちらの種類でも副作用として肝機能障害や皮疹などのリスクがあるため、定期的な採血などで注意深く経過観察を行う必要があります。
また尿酸排泄促進薬は尿を介して尿酸排出を促すため、尿酸結石のリスクとなります。このため尿酸結石の発症を防ぐため尿のアルカリ化をする内服も同時にすることを検討します。
高尿酸血症の治療目標は、合併症を防ぐことです。数値としては尿酸を6mg/dl未満にすることを目標にします。
上記の場合は薬物治療を検討します。ただし検査直前の脱水、運動、食事の状態で尿酸は上昇するためすぐに薬物療法を開始するかは患者様と相談の上検討をしていきます。
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