機能性ディスペプシア・過敏性腸症候群
機能性ディスペプシア・過敏性腸症候群
どちらも消化管に明らかな異常がないにもかかわらず、症状が続くという機能性の疾患とされています。ここではそれぞれに関して説明をしていきます。
機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia:FD)は、胃やみぞおちの不快感・痛み・胃もたれなどの症状が長く続くのに、内視鏡検査や血液検査などで明らかな異常が認められない状態を指す病気です。胃や十二指腸の粘膜に潰瘍やがん、炎症などの器質的な病変がなくても、症状が慢性的に続いたり、繰り返したりする場合に診断されます。検査で異常がなくとも症状がでるため不安になったり、生活の質の低下にかかわります。このため適切な問診、生活指導、治療が大切となります。
機能性ディスペプシアで多くみられる症状には、大きく2つに分かれます。
食後愁訴症候群
(PDS:Postprandial Distress Syndrome)
食後に症状が出やすいタイプです。
主な症状
痛みよりは食後に張るなどが主な訴えとなります。特にお腹が張ってしまうため食欲が低下する方もいらっしゃいます。
心窩部痛症候群
(EPS:Epigastric Pain Syndrome)
みぞおちの痛みや不快感が中心となるタイプです。
主な症状
痛みに関しても重たい、締め付けられる、キリキリする、ヒリヒリするなどさまざまと表現されることが多い症状です。
実際にはこれら両方の症状がある混合型の方も多くみられます。
これらの症状が3か月以上続くまたは繰り返す場合に機能性ディスペプシアと考えられることが多いです。
機能性ディスペプシアのはっきりした原因はまだ完全には解明されていませんが、次のような要因が関与していると考えられています。
胃の機能異常
胃自体がうまく広がらずにすぐに満腹になったり、胃の動きが低下して内容物がたまってしまうなどが起こります。
内臓知覚過敏
胃が正常に動いていても、刺激に対し強く不快に感じやすくなってしまいます。キリキリや胸やけなどさまざまに症状がでてきます。
ストレスや心理的要因
日常のストレスや不安などにより自律神経の影響が受けやすく胃腸の動きが弱くなったり、症状の増悪・改善がみられることがあります。
ピロリ菌の慢性感染、胃腸炎後
感染自体でも症状がでることはありますが、感染や炎症後に症状だけが続くケースがあります。
これらが単独というより複雑に絡み合って症状が現れると考えられています。
診断で大切なのは問診となります。どの部位に症状があるか、いつ悪くなるか、どんな感じ方か、食事や生活習慣の変化や関連性などを聞いていきます。
重い症状(体重減少、黒色便、持続的な嘔吐など)がある場合は、病気の可能性を調べるために迅速に検査が必要です。
主な検査は以下のようになります。
| 検査の種類 | 目的 |
|---|---|
| 胃カメラ検査 | 食道・胃・十二指腸に異常がないか直接確認できます。 |
| 血液検査 | 全身状態の確認をしていきます。炎症や貧血の有無、電解質やホルモンのバランスの異常なども評価していきます。 |
| 便・呼気検査 | 症状の背景にピロリ菌などの感染がみられる場合があるため、評価をしていきます。 |
| 超音波検査 | 主に肝臓、胆嚢、膵臓などの腹部臓器をチェックできます。 |
*上記検査で器質的な異常が見つからないにも関わらず症状がある場合に機能性ディスペプシアと診断される可能性があります。
日々の生活習慣を整えることは、症状改善に役立つことがあります。
食事
生活リズム
ストレスケア
軽い運動や休息、趣味の時間を持つことでストレスが緩和されると症状が楽になることがあります。
生活改善は単独で症状が消えるとは限りませんが、治療と組み合わせることで効果的です。
治療は、症状のタイプや程度に応じて以下のように進められます。
食事や睡眠、ストレス対策などの見直しを行います。
症状に応じて以下のような薬を使うことがあります。
ピロリ菌が検出された場合は除菌治療を行い、症状の改善が期待できることがあります。
過敏性腸症候群とは内視鏡検査や血液検査などで明らかな異常が見つからないにもかかわらず、腹痛などの腹部症状や、便秘や下痢で日常生活に影響を及ぼす疾患です。
10人に1人が抱えているとされており、珍しい病気ではありません。機能の異常や知覚神経などの過敏で症状が起きているとされており、腸管は自律神経で調節されているためストレスによる影響を受けやすく、強い不安や緊張などで症状を自覚するようになることがあります。
過敏性腸症候群の主な症状は腹痛などの腹部の不快感に加えて、下痢や便秘などの便通異常を起こします。腹部の不快感はキリキリするような痛み、お腹が張るような感じ、押されるような感じ、重苦しいなどさまざまな表現があります。症状は波があり、排便の後に症状が楽になる傾向があります。
便通異常も一人ひとり症状が異なり、下痢型では腸管が激しく動くことにより痛みが出現し、その後水のような下痢をします。
便秘型は腹部不快感が持続し排便をしたくなりますが、いきんでも小さなウサギのような便しか出ずに残便感も残ります。これらを合わせて、便秘と下痢の症状が両方ある混合型もあります。
IBSの診断はローマⅢ基準という基準に沿って行われます。具体的には以下の2つの内容となります。
ただしこれは小腸や大腸に炎症や腫瘍などがないことが前提となるため大腸内視鏡検査などで腸に異常がないことを確認することが重要です。また甲状腺機能異常などのホルモンの異常や薬剤など別の原因で機能異常を起こしている場合があり、詳細にお話を聞いていく必要があります。
過敏性腸症候群の原因ははっきりとは分かっていませんが、複数の要因が関係していると考えられています。
心理・社会的ストレス、内臓知覚過敏、腸管の粘膜バリアの変化、目視では確認できない微小な炎症、腸内細菌の変化、遺伝的要因などさまざまな面が指摘されています。
このため食事内容や、睡眠不足、ストレス環境などが症状を悪化させる可能性があるといわれており、生活習慣の調節も重要になってきます。
過敏性腸症候群では、感染性腸炎や潰瘍性大腸炎などの腸管の疾患や、ホルモンの異常などの全身疾患で症状が共通することがあります。このためまずは他の病気が隠れていないかを確認することが大切です。
当院では症状や経過を詳しくお伺いしたうえで、必要に応じて血液検査、内視鏡検査などを行います。大腸カメラ検査に関しては鎮静剤を使用するなど負担の少ない検査をしているため、安心してご相談ください。
これらの検査で重大な病気がないことを確認することで、安心して治療に取り組むことができます。
まずは生活環境を確認の上、無理のない範囲で改善していくことが大切になります。特に3食を規則的に食べる、睡眠、休養をしっかり取る、ストレスをためないことは大切になります。また適度な運動も症状に対し効果があるため、無理なく継続可能な運動を勧めることがあります。
お薬に関しては腸の動きを整えるお薬や、体に有益な細菌が含まれるプロバイオティクス、下痢型・便秘型に合わせて便の水分バランスを調節する薬剤などを使用します。
薬の効果は個人差があり、患者様本人の状態や治療によって症状が変われば別の処方が有効となることがあります。
当院では薬の効果や生活の状態などについて患者様のお話を伺って一人ひとりに合った最適な治療を心がけています。
機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群は周囲からは分かりにくく、一人で悩まれがちな病気です。しかし、適切な診療を受けることで症状が軽くなり、日常生活が楽になる方も多くいらっしゃいます。当院では症状の背景まで丁寧にお伺いをし、患者様と一緒に最適な治療を模索していきたいと思います。
お腹の不調でお悩みの際は、どうぞお気軽にご相談ください。
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